Lexical Resource とは|意味と、難しい単語が逆効果な理由
Lexical Resource(LR)とは、IELTS の採点4基準の1つで語彙を見るもの。各タスクのスコアの 25% を占めます。この語の意味と、公式 Band Descriptor が実際に評価する4つ、そして珍しい単語がなぜ Band 6 の癖なのかを before/after の例つきで解説します。
Writing 6.5 で止まっている人のノートを開くと、たいてい単語リストが出てきます。plethora, myriad, utilise, commence, ameliorate。全部暗記して、どのエッセイにも入れている。なのに Lexical Resource はいつも 6 で返ってくる。フィードバックに「もっと珍しい単語を使え」と書かれたことは、一度もない。
この光景こそ問題の核心です。6.5 になると、もっと格好いい語に手を伸ばしたくなる。でも公式の Band Descriptor は、不正確に使われたあまり一般的でない語彙を Band 6 の特徴として扱います。スコアを上げるはずの類語辞典が、じつはそれを押し下げている張本人かもしれない。
Lexical Resource(LR)とは、IELTS の Writing と Speaking を採点する4基準の1つで、語彙の使い方を見るものです。日本語にすれば「語彙力」ですが、測っているのは知っている単語の数ではありません。各タスクのスコアの 25% がここで決まります。この記事では、LR が実際に何を評価するのか、なぜ珍しい語が逆効果なのか、そして評価される 4 つを、そのまま真似できる例つきで見ていきます。
Lexical Resource とは何か、何を測るのか
Lexical Resource は語彙量のテストではありません。試験官は、珍しい語をいくつ詰め込めたかを数えているわけではない。この基準が同時に見るのは 4 つ。操れる語彙の幅、語を選ぶ精度、自然な語の結びつき(コロケーション、語が自然な相手と並んでいるか)、そしてスペルと語形の正確さです。
幅は大事ですが、天井ではなく床です。雑に使われた広い語彙は、正確に使われた狭い語彙に負けます。
LR は Writing の 4 基準の 1 つで、Task Response・Coherence and Cohesion・Grammatical Range & Accuracy と等しい重み。つまり各タスクのスコアの きっかり 25% を占めます。総合スコアを決めるのと同じ平均が、Writing の中で一段下でも繰り返される、ということです。
気になっている境界で、公開されている Band Descriptor が実際に何と言っているか。Band 6 では語彙は「generally adequate and appropriate for the task(課題に対して概ね十分で適切)」で、descriptor には単語帳ユーザーを真っ直ぐ指す一行があります。「if the writer is a risk-taker, there will be a wider range of vocabulary used but higher degrees of inaccuracy or inappropriacy(リスクを取る書き手なら語彙の幅は広がるが、不正確さ・不適切さの度合いも上がる)」。Band 7 では語彙が「some flexibility and precision(一定の柔軟さと正確さ)」に足り、「an awareness of style and collocation is evident(文体とコロケーションへの意識が見て取れる)」。並べて読めば、動かすべき鍵ははっきりします。7 が評価するのは希少性ではなく、正確さと収まりの良さです。
類語辞典の罠
2 つの descriptor を重ねると、あるパターンが浮かびます。Band 6 の descriptor が指摘するもの、つまりリスクを取る書き手の「higher degrees of inaccuracy or inappropriacy(より高い不正確さ・不適切さ)」を、6.5 の受験者は 6.5 を脱け出そうとして もっと やっている。
背伸びはこう読めます。
Band 6・類語過多: 「A myriad of individuals utilise public transport to commence their daily commute, which ameliorates traffic congestion.」
内容語が全部、より珍しい類語に置き換わっている。スペルミスはないけれど、「a myriad of individuals」や「commence」は暗記に読め、「ameliorates」は「congestion」と並ばない(congestion は ease するもので、ameliorate はしない)。試験官の目には、借り物のスーツを着た語彙に映ります。
同じアイデアを、書き手が本当に操れる語で書くと、こうなります。
Band 7・精確: 「When more people use public transport to get to work, road congestion eases.」
語は平易、収まりは正確。「eases」は「congestion」の自然な相手で、「get to work」は「commence their daily commute」が背伸びして言おうとしたことをそのまま言う。後者が高く出るのは、どの語も置かれるだけの理由があるからです。
セルフチェックは簡単です。「高度」と呼べそうな語を全部ハイライトする。各語について「丁寧なネイティブの書き手は ここで 実際にこの語を選ぶか?」と問う。2、3 個を超えて当てずっぽうなら、Band 7 に近づくどころか Band 6 らしさを出している。直すべきは、珍しい語ではなく、正しい語です。
LR が本当に評価する 4 つ
類語辞典の癖を外すと、この基準は 4 つの鍵に行き着きます。多くの学習者は幅、つまり語を集めることに労力を注ぎ、残りの 3 つを軽んじる。逆です。6 と 7 を分けるのは精度と自然な語の結びつきだからです。
コロケーション:単語は決まった相手と連れ立つ
英語の単語は決まった相手と連れ立ちます。相手を入れ替えると、意味は通っても響きが狂う。「make a decision」とは言うが「do a decision」とは言わない。雨は「heavy」で、「strong」ではない。「conduct research」はあっても「make a research」はない。これらの組み合わせに論理はなく、ただ固定されている。相手を間違えることは、最も分かりやすい Band 6 のサインの一つです。Band 7 の descriptor が collocation を名指ししているからです。
直し方は、語をペアで覚えること。動詞+名詞、形容詞+名詞。孤立した辞書の見出しとしてではなく。「pollution」単体より、「tackle pollution」「reduce pollution」「air pollution」のほうが働きます。語が連れ歩く相手ごと蓄えれば、正確な語彙は記憶力の勝負ではなくなります。
精度:珍しい語より、正確な語
精度とは、いちばん格好いい語ではなく、自分の言いたいことをぴたりと表す語を選ぶこと。「a big problem」より「a serious problem」のほうが精確。「solve the poor problem」より「alleviate poverty」のほうが鋭い。どちらの直しにも珍しい語は要りません。「serious」も「alleviate」も中頻度の語で、Band 7 の書き手なら誰でも持っています。
だから小さくても狙いの定まった語彙が、派手な語彙を上回る。試験官が読み取るのは、その語を意図して選んだのか、それとも最初に浮かんだ大きい語をつかんだのか、です。
幅:合う場所で使う
幅も効きます。descriptor が求めるのは「some flexibility and precision(一定の柔軟さと正確さ)」に足る語彙。「important」を 6 回繰り返さず、「significant」「pressing」「central」をそれぞれの枠に当てる、ということ。ただし鍵は「style and collocation」の style(文体)の側にあります。「at the end of the day」や「a piece of cake」のようなイディオムをアカデミックなエッセイに落とすと文体(register)がぶつかり、語彙の豊かさではなく拙さに読めます。イディオムは Speaking に取っておく。あちらの descriptor は実際それを評価します。
スペルと語形:見落とされがちな半バンド
いちばん地味な鍵で、いちばん拾いやすい点。語形とは、語を正しい形で使うこと。「economic growth」であって「economical growth」ではない。「the development of technology」であって「the develop of technology」ではない。economy / economic / economical / economically という一族は、何千人もの受験者をつまずかせます。「economic(経済の)」と「economical(節約になる)」が別物だから。Band 7 が許すのはここでの時折のミスだけ。一文おきに語形やスペルを間違えると、気づかないうちに 6 で足止めされます。
気づかぬうちに 0.5 を奪う、よくある LR のミス
LR が 6 になるエッセイには、同じパターンが何度も出ます。コロケーションを壊す類語の置き換え。さっき見たとおり。文体を外したイディオム。「children」を「kids」、フォーマルな議論に「a lot of」。語形の誤り。正しい語根に間違った語尾。そして暗記した見せ場フレーズ。「it is a double-edged sword」「every coin has two sides」を、求めてもいない論点に貼りつける。
どれも語彙不足から来るのではありません。そこが肝心。今ある語彙のまま、全部直せる。だから LR は、見た目より取り戻しやすい半バンドであることが多いのです。
語彙力を毎日 5 分で鍛える
エッセイ一本練習は注意を 4 基準に分散させるので、LR だけを切り出した練習が当たりません。1 本書いて「Band 6, まずまずの語彙」と返ってきても、問題がコロケーションなのか精度なのか語形なのか分からないまま終わる。的を絞ったドリルが、それを直します。
- コロケーション点検。 書いた段落から、動詞+名詞・形容詞+名詞のペアを全部下線。怪しいものを、コロケーションを載せた辞書で引く。連れ立たない相手を直す。
- 精度の置き換え。 曖昧な語を 3 つ丸で囲む(「good」「big」「thing」)。それぞれを、本当に言いたかったことをぴたり表す語に替える。いちばん珍しい語ではなく。
- 語族ドリル。 キーになる名詞を 1 つ、たとえば「pollution」を取り、動詞・形容詞・副詞の形を書く。各形を 1 文で使う。1 週間に散らした 10 分で、語形の誤りはほぼ消えます。
5 分、1 つの鍵、毎日。語彙そのものが薄いなら、IELTS 単語の覚え方 が、このドリルに材料を供給する「選ぶ・入れる・思い出す」の手順をまとめています。これが IELTS Drills の発想です。フィードバックは 1 つの Band Descriptor に紐づくので、弱い基準が LR なら、エッセイ一本をもう 1 本書いて祈る代わりに、コロケーションと精度だけを叩けます。
LR が 6.5 を止めている基準だと確信が持てないなら、Task Response、Coherence and Cohesion、文法 のいずれかかもしれません。その場合は 4 軸の自己診断 が 4 つすべてを通して、正しい軸に狙いを定めさせてくれます。そこで求められる抑制は、coherence and cohesion が評価する ものと同じ。多さより、少なく的確に。
よくある質問
Lexical resource は語彙の量のこと? 少し違います。評価されるのは幅だけでなく、精度、コロケーション、スペルと語形の正確さ。語彙が多くても不正確に使えば 6 のままです。
Band 7・8 の単語リストを暗記すべき? いいえ。暗記した「高度な」語を場違いに使うと LR は下がります。descriptor が評価するのは希少性ではなく「awareness of style and collocation(文体とコロケーションへの意識)」だから。中頻度の語を正確に使うほうが、珍しい語を不安定に使うより上です。
1 エッセイにあまり一般的でない語はいくつ要る? 目標の数はありません。descriptor が求めるのは量ではなく適切さ。ぴたり合うあまり一般的でない語が 1 つあれば、無理に詰めた 5 つに勝ちます。
Lexical resource は Speaking にもある? あります。両方の基準です。Speaking 版は paraphrase と自然なイディオムも評価し、これはアカデミックライティングのよりフォーマルな文体(register)とは別に見られます。
Lexical resource は何点ぶん? 各タスクのスコアのきっかり 25%。各タスクで 4 基準は等しい重みづけで、タスクのスコアはその平均です。それが総合バンドに入る前の話。なお総合では Task 2 が Task 1 の 2 倍の重み。
まとめ
6.5 で珍しい単語に手を伸ばすのは間違った本能です。不正確に使われたあまり一般的でない語彙こそ Band 6 の姿だから。Lexical Resource が評価するのはもっと静かなもの。珍しい語より正しい語、本当に連れ立つ相手、そして正しく綴られた語形。この 3 つが決まれば、今ある語彙がどんな類語辞典より遠くまで連れて行ってくれます。
試験官が当てているテストはシンプルです。どの語も「選んだ」ように響くか、それとも「背伸び」に響くか。前者を狙って書けば、LR が 0.5 を奪い続ける原因ではなくなる。IELTS Drills で返ってくるのは、まさにそういうフィードバックです。LR にタグ付けされて、毎日 5 分で。


