英検 IELTS 換算:ぶれるのは級ではなく IELTS 側
英検と IELTS のスコア対応を公式資料だけで整理。合格していれば CEFR が 1 つに決まる理由、公式表に○が 2 つ付く理由、幅が生まれるのは CEFR から IELTS への段だということ、そして国が英検だけ加算の枠を分けていない事実まで。
「英検準1級は IELTS 6.0 くらい」。この一文を読んでここに来た人が多いと思います。先に結論を書くと、準1級に合格しているなら CEFR は B2 で確定します。ぶれるのはその先、B2 に対応する IELTS のほうです。
英検協会の公式表で準1級の欄に○が 2 つ(B1 と B2)付いているのは、その級を受験した人の話であって、合格した人の話ではありません。一方で CEFR の B2 は IELTS の 5.5・6.0・6.5 という 3 バンドに広がっていて、こちらは 1 つの数値に絞れません。「準1級 = 6.0」が雑なのは、級から CEFR への段ではなく、CEFR から IELTS への段です。以下、公式資料だけで順に追います。IELTS 起点で 5 試験を横断したい場合はスコア換算表のほうが早いので、そちらへどうぞ。
英検の公式表には、級ごとに○が複数ある
出発点は英検協会の CSE ページです。「CEFRレベルと英検CSEスコアの対応」という見出しの下に、級と CEFR の関係がそのまま載っています。
| CEFR | 3級 | 準2級 | 準2級プラス | 2級 | 準1級 | 1級 | 4技能総合スコア |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| C1 | − | − | − | − | − | ○ | 2600 〜 |
| B2 | − | − | − | − | ○ | ○ | 2300 〜 |
| B1 | − | − | − | ○ | ○ | − | 1950 〜 |
| A2 | − | ○ | ○ | ○ | − | − | 1700 〜 |
| A1 | ○ | ○ | ○ | − | − | − | 1400 〜 |
縦に見ると、○が 1 つだけなのは 3級です。2級は A2 と B1、準1級は B1 と B2、1級は B2 と C1 にまたがっている。C2 の行はそもそも表にありません。
理由は仕組みにあります。英検は級ごとに「CEFR算出範囲」というスコア帯を決めていて、公式の説明はこうです。「この範囲を下回った場合は、CEFRレベルが表示されません。範囲内の場合は、そのスコアに応じたCEFRレベルが表示されます。この範囲を上回った場合は、その級で算出できるCEFRレベルの上限が表示されます」。
判定しているのは合否ではなく、4技能総合スコアです。だからこの表は「その級を受けるとどの CEFR が出うるか」を示していて、受かったかどうかは条件に入っていません。
合格していれば、CEFR は 1 つに決まる
数字を入れると、○が 2 つ付く理由がはっきりします。
英検の合格基準スコアは一次と二次で別々に決まっていて、両方に達して初めて合格です。一次はリーディング・リスニング・ライティングの合算、二次はスピーキングのみ。4技能総合スコアはその合算なので、合格者の総合スコアは必ず「一次の基準 + 二次の基準」以上になります。
| 級 | 一次 | 二次 | 合格に必要な 4技能総合 | すぐ下の CEFR 閾値 | 合格者の CEFR |
|---|---|---|---|---|---|
| 1級 | 2028 | 602 | 2630 | C1 = 2600 | C1 |
| 準1級 | 1792 | 512 | 2304 | B2 = 2300 | B2 |
| 2級 | 1520 | 460 | 1980 | B1 = 1950 | B1 |
| 準2級プラス | 1402 | 427 | 1829 | A2 = 1700 | A2 |
| 準2級 | 1322 | 406 | 1728 | A2 = 1700 | A2 |
| 3級 | 1103 | 353 | 1456 | A1 = 1400 | A1 |
どの級も、合格ラインが対応する CEFR 閾値のすぐ上に置かれています。1級は 30 点上、準1級は 4 点上、2級は 30 点上。偶然というより、そう置かれていると読むほうが自然です。
つまり準1級の合格証を持っている人の CEFR は B2 で、B1 にはなりません。B1 の○が付くのは、準1級を受験して不合格だった人のうち、4技能総合が 1950 以上 2300 未満だった場合です。1級の B2 も同じで、たとえば一次は通ったのに二次のスピーキングが 602 に届かず不合格、それでいて 4技能総合が 2300 以上 2600 未満だった場合が該当します。
英検はここに下限も置いています。「1級を受験された場合、4技能総合スコアが、準1級の合格基準スコアである2304未満だと4技能総合CEFRが表示されません」。上位級を受けて大きく崩れると、CEFR そのものが出ません。
もう 1 つ、見落とされやすい条件。「4技能すべてを受験しないと『4技能総合CEFR』は表示されません(一次試験の成績のみでは表示されません)」。一次試験の結果だけでは、CEFR も IELTS 相当も出せない仕組みです。
ぶれるのは IELTS 側
級から CEFR までは、合格していれば 1 対 1 で決まりました。問題はここから先です。
IELTS が公式に書いているのは、5.5〜6.5 が B2、7〜8 が C1。8.5 以上が C2 で、バンド 8 は境界線上(borderline)と明記されています。B1 は本文に数値がなく、公式の対照図で 4.0・4.5・5.0 の目盛りが並ぶ位置です(詳しくはIELTS と CEFR)。
B2 に 3 バンド、C1 に 3 バンド。1 つの CEFR レベルが IELTS の 3 段階に対応するので、ここで幅が生まれます。
IELTS 自身も、この対応を 1 つの数値に決め打ちしないよう注意を促しています。IELTS のスコアと CEFR レベルの間に 1 対 1 の対応は存在しない、と明記したうえで、対照図についてはこう書いています。「They should not be interpreted as reflecting strong claims about exact equivalence between assessment products or the scores they generate(試験や、そこから出るスコアの正確な等価性を主張したものと解釈すべきではない)」。理由も添えられていて、IELTS は CEFR より先にあった試験なので、バンドの区切りが CEFR の境界と正確に一致したことは一度もない、と説明されています。
具体例まで公式が出しています。C1 の最低ラインは 6.5 と 7 の間に落ちるので、6.5 を取った人の多くは C1 だが一部はわずかに下回る、と。だから「1級 = IELTS 6.5」と書くと、公式が「C1 に届かない人が混ざる」と言っている帯を指すことになります。
さらに、対照図が示すのは総合バンドであって技能別スコアではない、とも書かれています。準1級に受かった人の IELTS Writing がどうなるかは、この対応表の外の話です。
つないだ結果
英検の級 →(合格していれば確定)→ CEFR →(IELTS 公式)→ バンド。前半は狭く、後半で広がります。
| 英検の級(合格者) | CEFR | 対応する IELTS |
|---|---|---|
| 1級 | C1 | 7.0〜8.0 |
| 準1級 | B2 | 5.5〜6.5 |
| 2級 | B1 | 4.0〜5.0 |
| 準2級プラス | A2 | IELTS 非公表 |
| 準2級 | A2 | IELTS 非公表 |
| 3級 | A1 | IELTS 非公表 |
A2 と A1 が「非公表」なのは、IELTS が CEFR 対応を示しているのがバンド 4.0 から上だけだからです。よそのサイトで見る A2 の具体的なバンドは、公式の数字ではありません。
不合格だった級の成績表を見ている場合は、この表ではなく前の節を使ってください。4技能総合スコアを 2600 / 2300 / 1950 / 1700 / 1400 と比べれば CEFR が決まります。ただし判定はあくまで受験した級の CEFR算出範囲の中で行われるので、上限はその級の○の上のほうまでです。
国も一対一では換算していない
ここからは実務の話です。人事院は 2026年度 国家公務員採用総合職試験で、TOEFL・TOEIC・IELTS・英検の 4 つを同じ加算制度に組み込んでいます。ところが加算点の刻み方が、英検だけ違う。
| 試験 | 15 点 | 25 点 |
|---|---|---|
| TOEFL iBT | 65 以上 80 未満 | 80 以上 |
| TOEIC L&R | 600 以上 730 未満 | 730 以上 |
| IELTS | 5.5 以上 6.5 未満 | 6.5 以上 |
| 英検 | (枠なし) | 準1級または1級 |
他の 3 試験はスコアで 2 段階に分けているのに、英検だけは級で 1 段階。IELTS 5.5 に対応する 15 点の枠が、英検には用意されていません。しかも受け付ける書類は合格証明書などに限られていて、「Certification Card 及び個人成績表は証明書類として取り扱いません」と明記されています。
つまり国が英検を扱うときの線引きは、CSE スコアではなく級(合否)です。他の 3 試験と同じ目盛りには載せていない。準1級と IELTS 5.5 が CEFR 上で近くても、制度上の扱いは揃いません。
文科省の対照表を引くときの注意
英検と IELTS を同じ縦軸に並べた公的資料としては、文部科学省の「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」があります。IELTS 行は C2=9.0〜8.5、C1=8.0〜7.0、B2=6.5〜5.5、B1=5.0〜4.0。英検行は CSE スコアで C1=3299〜2600、B2=2599〜2300、B1=2299〜1950。空欄については「スコアの記載がない欄は、各資格・検定試験において当該欄に対応する能力を有していると認定できないことを意味する」と注記されています。各級の合格スコア(1級 2630、準1級 2304、2級 1980)も、それぞれ C1・B2・B1 の帯に置かれている。前の節の計算と一致します。
引用するなら、文科省自身の但し書きも一緒に読んでください。同省のページには、この対照表から作られた令和元年 7 月版について「※本資料は令和元年7月当時のものであり、現状とは異なる可能性があるため、リンク先を削除しています」とあります。作った側が現行性を保証していない系統の資料です。
そもそもこの対照表は大学入試英語成績提供システムのために整備されたもので、そのシステム自体が令和2年度からの導入見送りになりました。出典なしで今も出回っている換算表の数字は、ここから派生したものが多いようです。
英検から IELTS を目指すなら
対応に幅があることと、準備の見通しが立たないことは別です。
級ではなく 4技能総合スコアを見る。 準1級 2304 ちょうどと準1級 2500 では、同じ B2 でも位置が違います。C1 の入り口 2600 までの距離が見えるのは、級ではなくスコアのほうです。
技能ごとの偏りを確認する。 IELTS の対照図は総合バンドの話だと公式が明記しています。英検の技能別スコアで Writing だけ落ち込んでいるなら、総合が B2 でも IELTS の Writing は別に考える必要があります。
出願先の要件は、換算表ではなく要項そのもので確かめる。 大学入学者選抜実施要項は換算方法の決定を各大学に委ねていて、全国共通の換算表を示していません。「準1級 = 6.0 だから大丈夫」ではなく、その大学が何をどう受け付けるかを読むのが確実です。
英検から IELTS に移る人がつまずくのは、たいてい語彙ではなく評価の仕組みのほうです。英検は級の合否で返ってくるのに対し、IELTS は技能ごとに 4 つのBand Descriptorで評価される。IELTS Drills はその 4 軸に紐づけてフィードバックを返すので、「準1級には受かるのに IELTS の Writing が 6.0 で止まる」の中身が軸の名前で見えます。あとはその 1 軸だけを毎日 5 分。
よくある質問
英検準1級は IELTS で何点? 準1級に合格していれば CEFR は B2 で、IELTS では 5.5〜6.5 の帯にあたります。1 点には決まりません。B2 が 3 バンドに広がっているためで、級の側があいまいだからではありません。
英検1級は IELTS 7.0 相当? 1級に合格していれば 4技能総合スコアは必ず 2630 以上なので CEFR は C1、IELTS では 7.0〜8.0 の帯です。1級の欄に B2 の○も付いているのは、1級を受験して不合格だった人のスコアが含まれるためです。
IELTS 6.5 は英検何級? 6.5 は CEFR B2 の上端で、B2 が確定するのは準1級の合格者です。ただし IELTS 公式は、C1 の最低ラインが 6.5 と 7 の間に落ちるため 6.5 の一部はすでに C1 だとも書いています。級で言い切れる問いではありません。
IELTS 5.5 は英検準1級? CEFR で見れば 5.5 は B2 の下端、準1級の合格ライン 2304 も B2 の下端(2300)のすぐ上なので、帯としては重なります。ただし人事院は IELTS 5.5 に 15 点を与える一方、英検には 15 点の枠を置いていません。制度によって扱いが変わります。
CSE スコアから IELTS のスコアを計算できる? できません。英検協会の説明では、CSE で比較できるのは「違う回に同じ級を受験した方の結果や同じ回に別々の級を受験した方の結果」、つまり英検内の比較です。IELTS 側も CEFR との 1 対 1 の対応は存在しないと明記しています。できるのは CEFR を挟んで帯で対応づけることまでです。
一次試験の結果だけで CEFR は分かる? 分かりません。英検は「4技能すべてを受験しないと『4技能総合CEFR』は表示されません」と明記しています。
どちらを受けるべき? 提出先で決まります。国内の入試・採用なら英検が使える場面が多く、海外の大学や移民手続きなら IELTS が要件になります。JASSO の海外留学支援制度(学部学位取得型)の英語要件は TOEFL iBT 80 または IELTS 6.0 で、英検は基準に入っていません。
まとめ
「英検○級 = IELTS ○.○」が定まらない原因は、多くの記事が書くところとは逆側にあります。級から CEFR までは、合格していれば 1 つに決まる。合格ラインが CEFR 閾値のすぐ上(準1級なら 4 点上)に置かれているからです。定まらないのはその先で、CEFR の 1 レベルが IELTS の 3 バンドに広がる。IELTS 自身が 1 対 1 の対応は存在しないと書き、C1 の閾値が 6.5 と 7 の間に落ちることまで公表しています。
だから答え方はこうなります。準1級なら B2、つまり 5.5〜6.5。その中のどこかを詰めたいなら、換算表ではなく 4技能総合スコアと、出願先の要項を見る。IELTS Drills なら、Band Descriptor のどの軸で 0.5 を落としているかが軸の名前で返ってきます。毎日 5 分で。


