TOEIC・IELTS 換算表|出典と、なぜ表がバラバラか
TOEIC・IELTS 換算に公式の対応表は存在しません。TOEIC 800・900 が IELTS でどのくらいか、ETS と IELTS が実際に公表しているものは何か、なぜ換算表がサイトごとにバラバラなのか、そして TOEIC が測っていない半分を、出典を分けて解説します。
TOEIC のスコアは持っている。IELTS のバンドを聞かれた。そこで換算表を探すと、書いてある数字がサイトごとに違う。あるページは TOEIC 870 を IELTS 7.0 と言い、別のページは同じスコアを 6.0 あたりに置く。そして、その数字がどこから来たのかは、ほとんどどこにも書いていない。
ばらつきの理由ははっきりしています。TOEIC と IELTS のあいだに、公式の対応表は存在しません。ETS も IELTS も、そんなものを出したことがない。各テストが公表しているのは、それぞれ別々の CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)への対応だけで、しかもその対応自体、見た目よりずっと緩い。この記事では、2つの試験実施団体が実際に公表しているものを示し、そこからどこまで正直に伸ばせるかを示し、そして TOEIC のスコアでは何ひとつ分からない部分を扱います。
ETS と IELTS が実際に公表しているもの
まず一次資料から。ここが、ネット上の換算表がこっそり離れていく地点です。
ETS が公表しているのは、合計点ではなくセクション別の基準点。 TOEIC Listening & Reading の CEFR 下限は、B2 が Listening 400 と Reading 385、C1 が Listening 490 と Reading 455。この2つは別々のハードルです。「TOEIC の合計◯点=CEFR の◯レベル」という形を ETS は公表していません。そして対応は C1 で止まります。
IELTS は CEFR 対応を公表していますが、注意書きつき。 IELTS ははっきりこう述べています。バンドと CEFR レベルは「exact equivalence(正確な同等性)について強い主張を反映するものと解釈すべきではない」。IELTS は「level-based test ではない」。だから一対一の対応にはならない、と。境界にあたるバンドも明示されています。バンド 6.5 は「多くの 6.5 の受験者は C1 だが、一部はわずかに下」。バンド 8 は C2 の境界。そして 8.5 以上が C2 です。
つまり、橋は架かっている。ただし、ぼやけた対応を2つつないだ橋です。その上に立つものは点ではなく範囲になり、範囲の両端はやわらかい。ここが正直な出発点で、これだけでも多くの換算表が認めていないことです。
根拠を示せる TOEIC・IELTS 換算
ETS のセクション別下限を合計に足し上げ、IELTS の対応と突き合わせると、こうなります。TOEIC の合計値は私の計算であって ETS の公表値ではありません。そう明記したうえで載せます。
| TOEIC L&R(合計・導出値) | CEFR | IELTS |
|---|---|---|
| 約945 以上 | C1 | 7.0–8.0(8.0 は C2 の境界) |
| 約785–940 | B2 | 5.5–6.5(6.5 は C1 の境界) |
| 約550–780 | B1 | 4.0–5.0 |
| (測定範囲外) | C2 | 8.5–9.0 |
下側が B1 で止まっているのには理由があります。IELTS は band 4.0 未満について CEFR 対応を公表していません。だから低い TOEIC スコアに合わせる公式の相手がいない。そこを埋めた表も見かけますが、あれは作った数字です。
左の列には注意書きが2つ要ります。この値は ETS の Listening と Reading の下限を足しただけ(400+385=785、490+455=945)で、ETS はそんな足し算を誰にも求めていません。そして、偏ったスコアでは壊れます。Listening 495・Reading 305 の人は合計 800 で、表の上では B2。けれど Reading は B2 の下限 385 に遠く届いていない。TOEIC から本当の CEFR レベルを知りたいなら、合計ではなく2つのセクション得点を下限と見比べてください。 ネット上のどの換算表もこれを言いません。人が入力したいのは合計点だからです。
TOEIC L&R の対応は C1 までなので、IELTS 8.5 や 9.0 に当たる TOEIC のスコアは存在しません。そして各行の幅にも注目を。CEFR の1レベルが、IELTS の1バンド分と TOEIC の150点分をまとめて飲み込んでいる。この幅が、2つの試験が共有する唯一の橋の解像度です。
なぜ換算表はバラバラなのか
検索すると、上の表よりずっと精密に見える表が出てきます。TOEIC 970〜990 で IELTS 7.5、870〜970 で 7.0、820〜870 で 6.5、というふうに。細かく、具体的で、そして出典はまず書かれていない。
互いに食い違う理由は単純です。合意すべき公式のものが存在しない。どの表も、私がいま架けたのと同じ橋を、自前の計算か自社の学習者データで架け、その計算過程を伏せたまま結果だけ印刷している。CEFR 経由より甘めに出るものもあります。TOEIC 870 は導出した B2 の帯の中にあり、IELTS は B2 を 5.5〜6.5 と読む。だから 870 をそのまま 7.0 と呼ぶのは、6.5 が C1 の境界であることを差し引いても、CEFR の連鎖が届く先より遠い。
ただし、それらの表が単純に間違いだとまでは言いません。私を含め誰も、決着をつけられる公式の対応表を持っていないからです。言えるのはこうです。出典も範囲もなしに1つの数字を示す表は、ETS も IELTS も自分では主張していない精度を主張している。換算表を見て「この数字、都合が良すぎないか」と感じたことがあるなら、その勘のほうが表より信用できます。
TOEIC のスコア別に見る
手元にあるのは TOEIC のスコアなので、そちら側から読みます。以下はどれも、2つのセクションがそこそこ均衡している前提です。偏っているなら、セクション別の下限に戻ってください。
TOEIC 600。 導出値では B1 のあたりで、IELTS 4.0〜5.0 が視野に入ります。日常的な理解はできても、大学やビザが求める水準にはまだ届きません。
TOEIC 700。 まだ B1、4.0〜5.0 のまま。600 から 700 は TOEIC のスケールでは大きな前進に感じますが、CEFR の上では動いていない。2つのスケールの伸び方がどれだけ違うか、という話です。
TOEIC 800。 導出した B2 の入口(約785)を越えたところ。正直な範囲は IELTS 5.5〜6.5。IELTS を意識しはじめる人がいちばん多く持っているスコア帯で、範囲が広いままなのは、IELTS が採点する半分について TOEIC が何も語っていないからです。
TOEIC 900。 B2 のなかで余裕があり、導出した C1 の線(約945)には届いていない。範囲は 5.5〜6.5 のままで、6.5 は射程。しかもその 6.5 自体が C1 の境界にあります。よく言われる「TOEIC 900=IELTS 7.0」は、CEFR の連鎖が支えられる範囲を一歩越えています。
TOEIC 990。 満点は導出した C1 の線を越え、IELTS 7.0〜8.0 と読めます。C1 は TOEIC L&R の測定が終わる場所でもあるので、これより上について換算は何も言えません。
IELTS のバンド別に見る
目標から逆算する場合は、こちら側から。
IELTS 5.5〜6.5 は B2。導出値で TOEIC およそ 785〜940、6.5 は C1 の境界です。学部留学や多くのビザ要件がこの帯にあります。
IELTS 7.0〜8.0 は C1。導出値で TOEIC およそ 945 以上、8.0 は C2 の境界。紙の上では、ほぼ満点の TOEIC がこの帯の入場券になります。
IELTS 8.5〜9.0 は C2 で、TOEIC L&R は届きません。
TOEFL・CEFR・英検まで同じ枠で見たい場合は、スコア換算表の総合ガイドが5つのテストを扱っています(TOEFL の 1〜6 スケールを含む)。英検との対応だけを詳しく見るなら英検 IELTS 換算へ。
TOEIC のスコアが何も語らない、IELTS の残り半分
換算表が飛ばすのはここで、そしてここが実際のバンドを決めます。
TOEIC Listening & Reading が測るのは、リスニングとリーディング。それがテストのすべてです。IELTS は4技能を測り、そのうち Writing と Speaking は、認識するのではなく自分で産出する技能。TOEIC のスコアは、その2つについて沈黙しています。予測が弱いのではありません。そもそも測っていないので、予測になっていない。
このギャップには形があります。IELTS の Writing は4つの基準で別々に採点されます。Task Achievement(Task 2 では Task Response)、Coherence and Cohesion、Lexical Resource、Grammatical Range and Accuracy。TOEIC 900 から来た受験者は、受け取る側の半分をこなす語彙力と文法認識をたいてい持っています。そして Task 2 に向き合って気づく。複雑な文を「読んで分かる」ことと、40分の制限のなかで「自分で作る」ことは別の能力だと。Speaking は試験官との対面のやり取りです。選択式のリーディング問題で予行演習できるものは、そこに1つもありません。
だから「TOEIC 900」の誠実な読み方はこうなります。リスニングとリーディングは、おそらく 6.5 の射程にある。そして Writing と Speaking は未計測。総合バンドは4セクションの平均なので、一度も測られていない2つが、結局あなたのバンドを決めます。この平均の仕組みはIELTS のバンドスコアの決まり方にあります。
換算したあと、何をするか
出てきた範囲は、スコアの半分についての仮説だと考えてください。そのうえで、残り半分を測りにいく。時間を計って Writing Task 2 を1本、Speaking の練習を1回。そして総合点ではなく4基準で採点する。この1回が、どんな換算表よりも多くを教えます。TOEIC が空欄にしていた部分を、実際に測るからです。
この基準ごとの読み取りが IELTS Drills の作りです。フィードバックは1つの数字ではなく、1つの Band Descriptor にタグ付けされて返る。だから TOEIC 型の学習者にありがちなパターン、つまり Lexical Resource は保っているのに Task Response と Coherence が遅れている(TOEIC のために誰もそこを鍛えないので)という形が見え、すでに知っている単語を読み直す代わりに、弱い1軸を毎日5分で叩けます。B2 の上のほうで止まっていて次の 0.5 がほしいなら、6.5 の壁の破り方が同じ話を扱っています。
出典と、どこからが私の計算か
これを分けることが、この記事の眼目です。
- IELTS が公表:band 4.0 以上の CEFR 対応(B1 = 4.0〜5.0、B2 = 5.5〜6.5、C1 = 7.0〜8.0、C2 = 8.5 以上)。band 4.0 未満については何も公表していません。あわせて、正確な同等性を主張するものではないこと、IELTS が level-based test ではないこと、6.5 と 8.0 が境界であることも公表しています(ielts.org)。
- ETS が公表:TOEIC L&R の CEFR 下限をセクション別に。B2 が Listening 400 / Reading 385、C1 が Listening 490 / Reading 455。対応は C1 で止まります(ETS の CEFR 対応資料)。
- ここからは私の計算:セクション別下限を足して出した TOEIC の合計値(約550 / 約785 / 約945)と、2つの対応をつないで導いた TOEIC・IELTS の各行。
4つ目はありません。引用できる公式の TOEIC・IELTS 対応表が存在しないからです。1対1の数字をそのまま手渡す表は、私と同じやり方でその空白を埋めていて、たいていそう書いていません。
よくある質問
TOEIC 900 は IELTS でいくつ? 2つの公式 CEFR 対応をつなぐと、TOEIC 900 は B2 のなかに入り、IELTS はそれを 5.5〜6.5 と読みます。6.5 は C1 の境界です。7.0 と言い切る表は、出典が支えられる範囲より先に行っています。そして TOEIC 900 は、あなたの Writing と Speaking について何も語りません。
TOEIC 800 は IELTS でいくつ? これも B2 なので同じ 5.5〜6.5 の範囲、やや下寄りです。導出した B2 の入口が約785 なので、800 は越えたばかりの位置になります。
IELTS 6.5 は TOEIC でいくつ? IELTS 6.5 は B2(かつ C1 の境界)で、導出値では TOEIC およそ 785〜940 に当たります。ただし約束と読まないでください。TOEIC 900 を持っていても、バンドを下げやすい2つのセクションはまだ測られていません。
TOEIC・IELTS の換算表がバラバラで、おかしいのでは? その感覚は正しいです。従うべき公式の対応表がないので、どの表も CEFR か独自データを介した自前の橋。しかも CEFR 対応そのものに境界バンドがあり、「正確な同等性ではない」と明記されています。食い違うほうが正直な結果で、自信たっぷりの1つの数字のほうが不自然です。
TOEIC の合計点から CEFR レベルは分かる? 確実には分かりません。ETS が公表しているのはセクション別の下限なので、合計は弱いほうの半分を隠せます。Listening と Reading を別々に、B2 なら 400/385、C1 なら 490/455 と見比べてください。
換算したスコアを大学に出せる? 出せません。相手が指定したテストを、指定されたスコアで受ける必要があります。換算は受験を決める前のおおよその現在地で、出願上の効力はありません。
TOEIC 900 から IELTS 7.0 までどれくらい? 正直な数字はありません。TOEIC が一度も測っていない2技能しだいだからです。役に立つ最初の一歩は、採点つきの Writing 1本と Speaking の練習1回を基準ごとに見ること。それで、当て推量が具体的なギャップに変わります。
まとめ
TOEIC・IELTS に公式の換算はありません。あるのは、ETS のセクション別 CEFR 下限と、IELTS の CEFR 対応だけ。しかも後者は IELTS 自身が「正確な同等性ではない」と言い、6.5 と 8.0 で境界になります。つないで読めば、TOEIC 785〜940 は B2、つまり IELTS 5.5〜6.5。TOEIC 945 以上は C1 で 7.0〜8.0。そして TOEIC のスケールは 8.5 に届かない。この合計値は ETS のセクション別下限に対する私の足し算であって ETS の公表値ではなく、2つのセクションが偏っていれば合計は嘘をつきます。
そして何より、TOEIC のスコアが覆うのは IELTS が採点する4技能のうち2つで、飛ばされた2つがたいていバンドを決めます。おおよその現在地が要るなら換算すればいい。そのあとは、一度も測られていない半分を測りにいく。毎日5分で。


